都市空間の定点観測 手法と可能性
ワークショップ報告(報告担当 杉崎和久(練馬区都市整備公社)・饗庭伸(首都大学東京)

 

 都市空間の定点観測研究会は、学会21世紀ビジョン研究分科会の認定を受けた研究プロジェクトである。具体的には、都市空間の長期間の変遷をウェブカメラ等を用いて、定点で撮影し、画像アーカイブを蓄積していくプロジェクトである。研究会独自で設置・撮影するカメラと、既に公共団体、民間団体、個人で撮影されているカメラからの画像収集の二つの事業を中心に行っている。2004年度より活動を行っており、本ワークショップは、学会の認定を受けた後の初めての公開研究会である。取り組みを広く学会員に理解していただき、可能性や課題について議論をしていただくことを目的に開催された。

 司会は饗庭伸(首都大学東京)が、真鍋陸太郎(東京大学)、志村秀明(芝浦工業大学)と饗庭(前掲)が発題した。参加者は30名(途中退席者を含む)であった。

 発題では、まず饗庭より、プロジェクトの主旨、概略、具体的な手法について報告し、これまで都内4カ所で撮影された定点観測画像を10分程度に編集した映像を上映した。次いで、真鍋より、画像を撮影する時、画像を蓄積する時、および画像をアーカイブ化して検索する時の技術的な要点と論点について発題した。最後に、志村より「定点観測カメラ映像の効果」「行政(企業や他の研究組織など)の定点カメラへの協力要請」「デジタルアーカイブ構想」について発題した。

 発題に引き続き、研究会メンバーも含めたフロア全体での意見交換を行った。

 まずは、システムの信頼性、撮影方法、蓄積するデータの種類・形式などシステムについての議論が行われた。データの欠損などシステムの信頼性に関する課題への対応するためのカメラやサーバーなどの設置方法に関する提案、撮影方法については、あらかじめ視点やテーマを設定し、視点を設定すべきという意見とともに将来の人々の関心や価値観が変わることを想定し、あらゆる設定での画像蓄積の必要性が指摘された。また、景観変化を把握するためには、高所から俯瞰する画像だけでなく、人の目線から見あげる画像も重要であること、コンピューターによる立体化の画像処理を行うために2カ所からの撮影や魚眼も含めたさまざまな画角での撮影の提案もあった。さらに、画像データとともに将来検索可能な仕組みを想定し、時間、場所、位置、撮影角度などの画像とともにそろえるべきデータをあらかじめ検討することの重要性やGISやGPS等の技術の活用も提案された。

 次に、長期間蓄積される画像アーカイブの活用方法についての議論が行われた。例えば、被災地の復興プロセスを記録し、その後の災害に備えた復興プロセスを検討するための活用、今後の都市縮小化時代に対応して、大きな変化が予想される郊外住宅地や農村集落などの様子を記録すること、また自然の回復力を認識するために、自然環境が再生するプロセスやスピードを記録することなどが提案された。

 さらに、本プロジェクトで設置するウェブカメラ以外の既存資料や他の既設ウェブカメラなどの他のアーカイブとの連携・活用方法についての議論が行われた。個人や組織などが所有する昔の写真とそれらが撮影された場所の現在を比較することを通じて、今後観測画像を蓄積する本プロジェクトの可能性を想定するために有効であることや、既設の他のウェブカメラデータもアーカイブ化の対象とすることにより、効果的にデータ蓄積が可能になる点などの提案があった。

 最後に、今後は個人が収集している定点観測写真や研究者などが保有する都市計画に関する写真などの提供や定点観測カメラ設置などへの協力者を得るために、蓄積した画像データの公開やコンテストなどイベントを通じて、本プロジェクト自体の積極的な周知を実施することの必要性が提案された。

 ワークショップ終了後には、希望者にプロジェクトのメーリングリストに加入していただき、引き続きメール上での議論や情報交換を進めている。当研究会は、随時メンバーを募集中であり、ご興味をもたれた方は。info@teiten-camera.orgまでご連絡をいただきたい。また、プロジェクトのホームページhttp://teiten-camera.org/もあわせてご覧いただきたい。